貴方のために・・・ −1−

貴方はとても明るくて



貴方はいつでも一生懸命で



貴方は誰にでも優しくて



そんな貴方のそばにいたい



そう思うのは罪ですか?









貴方のために… -1-












「ナルト、本当にすまない」


執務室の大きな椅子に座っている20歳くらいの女性―5代目火影綱手―は
いきなりそう切り出した。



「?何でばぁちゃんが謝るんだってば。」


意味がさっぱり分からないと首を傾げるナルト。
それとは反対に綱手の顔は険しくなっていく。
後ろに控えているシズネも辛そうだ。



2人はナルトを見つめるだけで質問に答えようとしない。


「・・・・・・」
「なぁ、何で何だってば?答えてくんないとわかんないってば」


沈黙し続ける綱手にナルトが痺れを切らして尋ねた。




目を瞑り、はぁぁっと一生分のため息をつくかのように
ため息をつきながら渋々と話し始めた。



「うずまきナルト・・・お前を幽閉することになった」
「・・・・・・え?」



一瞬目を見開き驚いていたが、
すぐに俯いてしまってその表情を読み取ることができなかった。



「私は反対したのだが、強硬派の者たちが聞き入れなかったんだ。いや、
言い訳を並べ謝っても許してもらえるなんて思ってはいない。憎んでもらって結構だ」
「・・・そっか」
「本当にすまない」
「ばぁちゃんがあやまる必要なんてないってばよ」



そう言いながら顔を上げたナルトは笑っていた。
いつもの太陽のように光り輝くまぶしい笑顔。



「お前・・・辛くないのか?幽閉されたら外には出られないかもしれないんだよ」
「それでも、ばぁちゃんの所為じゃないから」
「・・・・・」



開いた口がふさがらない。
この子は優しすぎると思う気持ち、
そして、こんな子を幽閉するなんて言い出した上層部への怒りが
綱手の中でグルグルとうごめく。



「それにばぁちゃんは反対してくれたんだろ、だったら俺すっごくうれしい。
だからありがとうだってば」
「ナルト君、辛いなら泣いてもいいんですよ」


今まで口を開かなかったシズネが顔を歪めながら声を掛ける。


「ダイジョーブ!俺ってば強いからだから大丈夫なんだってば」



何故この子を助けてやれないのだろう。2人はただただ目の前の愛しい子を想う。



「で、ばぁちゃん俺ってばいつユウヘイせれんの?」


コテンと首を傾けながら聞く様子はとても幼く見えた。



「一週間後だ。その日にまたここに来てくれ」
「了解だってば!あぁ!もうこんな時間だってば、
サクラちゃんたちと甘味屋行くんだった。それじゃぁばぁちゃん俺もう行くね」
「あぁ、ナルト。最終日は三班合同任務にしておいたから」
「!!・・・ありがとうばぁちゃん」



そのまま騒がしく走り去った子の小さな背中を見つめる。そんな事しか出来ないから。
















ナルトが執務してから出て行ってからずっと沈黙し続ける2人。



サクラと会うというのはたぶん嘘だろう。
嘘をついてまでこの部屋から出て行きたかったのだ。
こっちはなんとも言えない状況になるのは当たり前だろう。



その沈黙を破ったのはシズネ。



「綱手様、行かせてしまっても宜しかったのですか?」
「はぁ・・・、あんな顔をされて無理やり引き止めることがあんたに出来るのかい?」
「・・・いえ」



ナルトは出て行くときまで笑っていた。
しかしその笑顔は初めのような明るい笑顔ではなく、何かに耐えるよう笑顔。
その原因を作ってしまったのは自分。
あの子の幸せを願ってやまない自分だから止めることが出来なかった。
あの子は私に生きる希望を与えてくれた子。


弟と恋人が死んでからはただ生きているから生きていた。
でもあの子が気付かせてくれた。
生きていく意味を、希望を。
だから私は火影になった。あの子の夢をかなえるために。
それなのに、それなのに私は自らの手であの子の夢を希望を断ち切ってしまった。
いや、あの子の言ったとおり私の所為ではないかもしれない。
それでも止められなかった自分に腹が立つ。


ギュッときつく手を握ると、ポタポタと腕をつたって書類にシミを作っていく。





「綱手様・・・・」





「本当にすまない。・・・ナルト」











私を助けてくれた貴方ために何もしてあげられない。












あとがき 初めて書くNARUTO小説が長編っていきなり無茶なことをしてしまいました。orz まだまだ始まったばかりですががんばって書きたいと思っているので どうぞ宜しくお願いします。 追記 綱手様の回想部分いれるの忘れてたorz 時雨の馬鹿!こんなヘタレは追放だ!!!(え?) ・・・冗談はさておき回想を入れたためかなり長くなってしまいました。 でもこれ長編だからいいよね? 本当にすみませんでした。